2010.08.01

「植物園に行こう!」

 いよいよ夏本番!
 海へ、山へ、色々なところへ出かけたくなる季節ですね。どこへ出かけようか、頭を悩まされている方も多いのではないでしょうか。楽しい場所は数え切れませんが、今夏は「植物園」に行かれてみてはいかがですか?

植物に付けられた説明板
説明板も付けることで学習効果を高める。

 「植物園」とはなんでしょうか。
 日本における植物園の定義は「鑑賞を通じて植物に対する知識を高め、自然に親しむ心を養うために、主として多数の植物を収集・育成・保存し、併せて学術研究等に資する植物園をいう」とあります。
 植物園は、植物を集めて育てて研究し、多くの人々に公開し普及啓蒙活動を行い、楽しんでもらうことで植物を通じて地球環境を考える、総合的な目的を持った社会教育施設といえます。その点で農業試験研究所や園芸会社の農場、公園、遊園地等と区別されます。

パピルス
古代エジプトで紙の原料に使われたパピルス

 「植物園」としての詳しい発祥は明らかではありませんが、美しい植物を集めた庭園、というものであれば、紀元前1500年頃のエジプトで始まっていたといいます。学術的要素を持つものに限っても、その歴史は紀元前340年頃のギリシャまでさかのぼれるそうです。当初の植物園は食用や薬用になる有用植物や観賞価値の高い美しい花が中心に栽培されていたようです。不老長寿への願望や度重なる戦争への備えを背景に、薬用植物園を中心に広まった植物園は、植民地時代に入ると特産物の栽培・繁殖の研究施設として発展を遂げました。今のような、教養やレクリエーションの役割を果たすようになってきたのは、終戦以降、産業の発達や平和によって人々に経済的余裕が生まれ市民生活が向上してからのことです。

滝のある温室
滝を作り、熱帯の雰囲気を出している温室

 日本には、社団法人日本植物園協会への加入・非加入あわせて、植物園として認識される施設が約200箇所あるとされています。
 一口に植物園といっても、規模や内容は多岐にわたります。主な目的別に下記に大別されます。

  研究植物園・・・元来の目的である、試験・研究の要素が色濃い植物園です。大学付属・薬用植物園などがそれにあたり、研究を第一目的としているため人々へのサービスとしては不十分なものもありましたが、最近は社会教育の重要性が認識され、研究と公開利用を両立させようとする植物園が増えています。

リュウゼツランの開花
何十年に一度のリュウゼツランの開花が見られるのも、植物園ならでは。

  普及啓蒙植物園・・・一般の人々のための植物園で、レクリエーション機能と同時に、植物知識の啓蒙を主目的としています。見せることを重要視しており、みなさんに最もなじみある植物園といえます。
  遊覧植物園・・・上記2つより遊覧的要素が強い植物園です。観光地に多く見られます。

 現在の植物園は教養・レクリエーションの役割が色濃くなっていますが、最大の目的が植物の調査・研究にあることを忘れてはなりません。特に環境破壊が問題視されている今日では、絶滅の危機に瀕している植物の調査・保護・繁殖という重大な役割も担うようになっています。
 これまではきれいな花を見て、森林浴をして、ガーデニングの見本として、癒され活用していた植物園ですが、そこには、植物をもっと知ってもらい植物を通じ地球環境のことをきちんと考えてほしい、という願いが込められていることを思い出してみてください。
 そして今夏行かれたら、これを機にまた何度も訪れてみてください。同じ場所なのに訪れる度に違う表情を見せてくれるのが、植物園の最大の魅力の一つです。四季折々の変化を肌で感じながら、植物を中心とした自然環境の大切さを、改めて認識して頂けたらと思います。

ヒスイカズラ
宝石と見紛うほど美しい熱帯の花、ヒスイカズラ