2016.06.01

やっかいな草。

img_2994thumbnail1.jpgコラム「スズランの日」を読んでいて思い出した。スズランて確か....

私事で恐縮。
新田次郎氏の小説が好きで今も愛読している。
その一つ「霧の子孫たち(※1)」の作中に、こんな場面がある。

“中学生のころ、スズランの原野でキャンプをして翌日全員が顔を腫らした。「スズランの匂いに酔ったのだ。」途中で出会った村人にそう言われた。同級生の一人が、スズランの花には毒があるに違いない、腫れたのは一種の中毒だろうと、いかにも医者の息子らしいことを言った。”

「スズランの日」を読んでいて、そのくだりを思い出した。
…そうだった。スズランて毒草だったんだっけ。

“花言葉は「幸福が訪れる」「純潔・純粋」「幸福の再来」「意識しない美しさ」。どれも相手を想って贈る時に相応しい言葉です。” (*コラム「スズランの日」より)

毒があるとは思えない花言葉の数々…。

毒草といえば、毎年この時期、顔をしかめたくなる厄介な植物が近所に生えてくる。その厄介な植物が今回の主人公。スズランじゃぁないよ。3月から綺麗な花のコラムが続いていたのに断ち切ってスイマセン。本当は先月に続けてスズランにしたかったのだけれど…。霧ヶ峰にも行きたかった。

dsc04741-2-615x800.jpg…で、本題。初夏を迎えると、自宅近くの小山にカシワ葉様の葉を持つ草が生えてくる。成長すると2mを超えようかという大型の雑草だ。茎や葉を折ると、なにやら滲み出てくるオレンジ色の汁(※2)が毒々しい。それが何とも薄気味悪い。ここ数年、この場所で爆発的に増えたような気がする。いや、“気がする”ではなく、明らかに増殖している。斜面を大群生地にしようかという勢いだ。引っこ抜きたい衝動に激しく駆られるが、ひとさまの土地へ勝手に入るわけにもいかず…。

この気色悪い植物、気になったのでちょっと調べてみた。
野草図鑑をひらいてみると…あったあった。

― タケニグサ ―
ケシ科タケニグサ属の多年草
別名:チャンパギク
花言葉:?
(※3)

dsc04747-2-591x800.jpg和名の由来には2つあって、中空の茎が竹に似ているところから“竹似草”説。この草を竹と一緒に煮ると竹が柔らかくなり細工しやすくなる“竹煮草”説とがあるという。別名のチャンパとは、現ベトナム中部沿岸部を中心にかつて存在した王国で、日本離れしたその姿とキクに似た葉から、本来は日本固有種であるものを外来種と間違えて名付けたらしい。繁殖力は超が付くほど旺盛で、花後は膨大な量の種子をつける。なので、ほったらかしにしておくと、それこそ大群生地にしかねない。

dsc04744-3-800x587.jpgちなみに全草有毒(※4)で、含まれる毒の成分は、アルカロイドのプロトアネモニン、プロトピン、サンギナリンやヘレリトリンなど…と、言われているけれど、難しくてよくわからないな。でも、アルカロイドっていうくらいだから絶対に口にしてはいけない(まさか口にする人はいないと思うが)。症状は、嘔吐、下痢、皮膚炎、脳麻痺、呼吸麻痺、体温低下。かつては民間療法で虫刺されなどに使われていたそうだが、これも避けるべき…てゆうか、やめてください。

ところで、このタケニグサ。欧米での扱いは全く違うようで、“雑草だなんてとんでもない!” なんと園芸種として庭園の観賞用に栽培されている(らしい)。この草が、庭中に生えているのを想像するだけで身の毛がよだつけれども、ところ変われば文化も変わる。なるほど。文化の違いというのは面白い……のだが、いずれにしても(個人的には)気色悪い草なので、このコラム読んでいるあなた。もし生えているのを見つけたら種のつく前にさっさと駆除しちゃってよ。頼むよ。

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今年もこの草の季節が終わるまで、ずっと目にすることになるのかと思うと……憂鬱。(´д`)ヤレヤレ

(※1)霧ヶ峰高原への突然の有料道路建設計画。その反対運動に起ち上がった人々と官権との闘いを、実話を基に描いた小説。反対派の人々、運動を取り巻く社会情勢、霧ヶ峰の植物、特に霧ヶ峰に咲く花々が鮮やかに描かれているので興味を持たれた方、ぜひ御一読を。
(※2)画像は→コチラ........と、言いたいところだけれど、あまりに気色悪くて二度と見たくない(勇気もない)ので、見たい!という方は御自身でどうぞ。
(※3) “素直”との説あり。う~ん…。
(※4)花、葉、茎、根など植物の全ての部分に毒をもっていること。前述のスズランも全草有毒で、特に花や根に多く含まれる。その症状は、嘔吐、頭痛、眩暈、心不全、血圧低下、心臓麻痺など。死に至る場合もある。山菜(ギョウジャニンニク)と誤食して中毒を起こす例が多く、その他、活けた水を飲んでも中毒を起こすことがあるそう。誤飲して死亡した事例も。贈られたスズランを活けた後の水は、さっさと処分しましょう。あと、山菜採りは専門家と御一緒に。