2008.07.01

「マングローブ」

 西表島のマングローブ林
 最近は、インテリアショップ等で見かけることが多くなった「マングローブ」ですが、「マングローブ」とは一体何を指しているのでしょう?

 
 
  「マングローブ」という名前の植物があるわけではなく、熱帯や亜熱帯地域の河口などの海水と淡水が入り交じる汽水域と呼ばれる区域に生育する植物群の総称を「マングローブ」と言います。その総称のなかに、「オヒルギ」・「メヒルギ」・「ヤエヤマヒルギ」等の種類があります。世界では70~100種類あると言われていますが、日本国内においては上記3種のほかに、「ハマザクロ」・「ヒルギダマシ」「ヒルギモドキ」・「ニッパヤシ」の7種が自生しているのを見ることができます。日本のなかで西表島のみ、7種全てを見ることができます。種類によって違いはありますが、自然分布としては種子島や沖縄・八重山諸島が北限と考えられています。

 メヒルギの胎生種子
 「マングローブ」の特色としては、全ての種類に当てはまるわけではありませんが海水に浸かっても枯れない・胎生種子植物である、等が挙げられます。このうち「胎生種子植物」とは、種子が母樹についた状態で細長く生長し、苗の状態になってから分離する植物を言います。干潮時にその分離した苗木が落ちればその場に刺さって生育し、潮位が高い時に落ちればしばらくの間水面を浮遊し、辿り着いた場所で生育します。通常の種子の状態では海面を漂っている間に発芽力を失ってしまうか、海底に沈んで発芽しても酸素がなく枯れてしまいます。
 ちなみにお店で売っている小さなサイズのマングローブは、胎生種子の状態の物です。

 支柱根、見えますか?
 また、マングローブは河口や入江の泥湿地帯で生育しているため、土中が極端な酸素不足の状態にあります。その酸素不足を補うため、タコの足のような「支柱根」・板状に広がった「板根」など様々な形の呼吸根を広げて空気中の酸素を吸収しています。これもまたマングローブの特徴の一つと言えますが、「呼吸根がある=マングローブ」というわけではありません。

 オヒルギ・メヒルギ等の「ヒルギ」は、漢字で書くと「漂木」と書きます。母樹から離れた苗木が海面を漂っている様子を表現している名前ですね。