- 2008.09.01
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「無花果」
前回ご紹介したガジュマルを擁する「イチジク属」ですが、イチジクを漢字で書くと「無花果」と書きます。しかし花が無い果実はありません。果実のように見える部分は花序(花の配列状態)なのです。茎の先端に花が並んでいるものを、茎の部分が包んでいるような状態です。その部分の先端に小さな「穴」が開いており、内部へと続く通路ができています。その通路がガジュマルの繁殖には欠かせないものとなっています。
通常、花はハチやチョウなどの虫たちが寄ってくるよう、きれいに派手にできています。虫たちの力を借りて花粉を運んでもらうためですね。しかしイチジク属は花が隠れていて見えません。虫たちの力を借りることはできません。先ほどの「穴」を使って「イチジクコバチ(ガジュマルコバチ)」という寄生バチが生活しています。コバチはその花に産卵して、そこで成長します。
コバチが他の花に移動する際に、花粉が運ばれます。もちろん寄生されているわけですから、花は害を受けます。が、イチジク属はこのコバチがいないと受粉ができないため、両者は相利共生の関係となっています。また、1種類のイチジクにつき、1種類のコバチしか存在しません。なので花は目立たなくて良いのですね。
小笠原諸島に持ち込まれたガジュマルも、当初はガジュマルコバチが持ち込まれていなかったために結実できず、人間が植えない限りは増えなかったそうです。それがある時ガジュマルコバチが持ち込まれ、それから小笠原諸島のガジュマルは急激に増えていったとの事です。
ちなみに、「ガジュマル」という名前の由来ですが、沖縄地方で「絡まる→がらまる→がまる」という言葉が訛ってできたものだそうです。