- 2011.05.01
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「菖蒲湯にはショウブ?アヤメ?」
5月5日は端午の節句です。この日はショウブを入れた風呂につかる菖蒲湯という風習があります。ショウブは根や茎から爽やかな香気を放つことから、中国では古くから邪気祓いとして軒先などにつるす習慣がありましたが、日本でも奈良時代には、邪気祓いの効能を持つショウブを湯に入れ無病息災を願う菖蒲湯として端午の節句に用いられています。そのため、端午の節句は「菖蒲の節句」とも呼ばれました。鎌倉時代に入り武家社会になった頃から、ショウブの読みが尚武(武道や軍事を大切なものととらえること)や勝負に通じることから、「尚武の節句」として、男の子の健康や立身出世を願う意味合いが強くなりました。
ところで、菖蒲という漢字にはショウブ以外の別の読み方があるのを御存じの方も多いと思います。ショウブが古くは「あやめ」と呼ばれていたことから、菖蒲は「あやめ」とも読むことができます。
あやめと言えば、「いずれアヤメかカキツバタ(いずれ=何れ。どちらが、の意)」の言い回しで「よく似ているが変わらず美しいこと」または「よく似ていて見分けがつかないこと」の例えとして用いられているのを耳にしたこともあるのではないでしょうか。しかし、ここで言うアヤメは、ショウブではなく「アヤメ」という名を持つ別の植物です。アヤメとカキツバタは、上述の慣用句が生まれるほど花がよく似ています。それにハナショウブを加えた3種はいずれもアヤメ科アヤメ属に属し、そっくりな花を持つことからしばしば混同されます。
以下に、アヤメ・カキツバタ・ハナショウブの簡単な見分け方を紹介します。アヤメ
開花期:4月下旬~5月上旬
花びら:付け根に網目模様
葉:幅1cm程度の剣状
植生地:山野部の乾燥地カキツバタ
開花期:5月中旬~下旬
花びら:付け根は白もしくは淡黄色
葉:幅2~3cm程度の剣状、中央の葉脈は目立たない
植生地:低湿地や池・沼ハナショウブ
開花期:5月下旬~6月
花びら:付け根は濃黄色
葉:幅2~3cm程度の剣状、中央の葉脈が隆起している
植生地:湿地を好むが乾燥地でも育つちなみにショウブはショウブ科に分類され、アヤメ類とは似ても似つかない花を持っています。
「菖蒲園」と名のつく庭園が各地にありますが、そこに植えられているのはショウブではなく花を楽しめるハナショウブです。現在、ショウブそのものがクローズアップされるのは、端午の節句の菖蒲湯の時だけになってしまった感があります。同じ種でも様々な呼び名があったり、違う種でも見た目から似たような名がつくことがあったり、紛らわしいですね。ですが、名付けられた経緯を知り、見分け方を知った上で鑑賞すれば、その植物をより一層楽しめることと思います。
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