2011.06.01

「緑のカーテンの魅力」

 「緑のカーテン」とは、ゴーヤやアサガオなどのつる性植物でつくる自然のカーテンのことで、エアコンに頼らずに涼を得られるエコな手段として、近年注目を集めています。

 私達が感じている暑さ・寒さは、気温だけでは決まりません。厳密には湿度や気流(風)も関わってきますが、暑さ・寒さを示す一般的な指標である「体感温度」は、【(気温+放射熱)÷2】の数式で、近い数字を算出することができます。
  気温・・・空気の温度のこと。
  放射熱・・・あらゆる物質が、その物質の持つ温度に応じて放出している熱のこと。直射日光にさらされたコンクリートの放射熱は高く、日陰の芝生の放射熱は低くなる。
 室温を28℃に設定した、バルコニーに面した部屋の体感温度を考えてみましょう。 コンクリートは直射日光による熱を蓄えてしまうため、バルコニーの表面温度は夏の日中には50℃以上にもなり、体感温度は【(28℃+50℃)÷2】=39℃となります。一方、緑のカーテンでバルコニーへの直射日光を防いだ場合の表面温度は30℃程度に抑えられ、体感温度は【(28℃+30℃)÷2】=29℃と、体感温度に10℃以上もの差が出てきます。
 気温の調節はエアコンを使わないとできません。ですので、放射熱の方をコントロールし体感温度を下げようというのが緑のカーテンの大きな狙いです。

緑のカーテンの代表種、ゴーヤ
緑のカーテンの代表種、ゴーヤ

 日光をさえぎる「遮蔽作用」だけならすだれでも構いません。緑のカーテンにはもう一つ特徴があります。
 植物は、人が暑い時汗をかいて体温を下げるように、葉から水蒸気を能動的に蒸発させ自身の温度調節をする「蒸散」を行なっています。すだれは段々と熱を帯び放射熱も上がってしまうのに対し、植物であれば「蒸散作用」により自身の温度は一定以上にならないかつ水蒸気が周りの温度も下げるので、放射熱をぐっと抑えられるのです。
 緑のカーテンには他にも、葉でホコリや大気汚染物質を吸着することでクリーンな風にし、また、強い風を和らげる防風効果や、よく茂れば騒音を和らげる効果も期待できます。以上の直接的な効果はもとより、手をかけて育てただけ応えてくれる喜びが得られ、使用する植物によっては花を楽しんだり実を収穫したりすることも可能です。また、ヒートアイランド現象や地球温暖化現象などの環境問題への関心を高めるきっかけとして教育の場でも多く取り入れられています。

ヘチマの苗
ヘチマの苗

 緑のカーテンにおすすめの植物をいくつか御紹介します。
  花を楽しむ・・・トケイソウ、クレマチス、アサガオ、ユウガオ
  実を楽しむ・・・ゴーヤ、ヘチマ、ブドウ
 多くの種類は、4〜5月にかけて種(苗であれば〜6月)を植え付ければ、6〜10月にかけて緑のカーテンを楽しむことができます。1年で枯れる一年草や毎年楽しめる多年草、常緑のものから冬は落葉するもの等ありますので、目的や好みに応じて選んでみてください。

クレマチスの花
クレマチスの花

 省エネ効果だけでなく、癒しの効果や地域の人々とのコミュニケーション効果を期待して、仮設住宅へ緑のカーテンを設置する動きも広まっているようです。東日本震災の影響による電力不足への懸念から、今年は緑のカーテンへの注目が特に高まっており、扱っている園芸店やホームページも多く見られます。苗からの植え付けであればまだ間に合いますので、今年は皆さんも挑戦されてみてはいかがでしょうか。