2011.07.01

「見た目も中身も色々なタケ」

 タケ・ササ・バンブーの違いは本コラムでも御紹介したことがありますが(2010年7月コラム»「タケ・ササとバンブーの違い」 )、今回はその中でも特に生活に関わりが深いといえる“タケ”の違いに着目し、多種多様な面のほんの一部を御紹介したいと思います。

マダケ
マダケ

マダケ[真竹]
稈は先端まで直立しており材質は竹類の中でも最高で、屈曲性・弾力性・加工性・耐久性等様々な物理性に優れているため、内装用建材・茶華道道具・楽器類など加工製品材料として重宝されています。また皮は防菌性・通気性・柔軟性に優れていることから、包装用材料・ばれんなどに用いられます。枝は竹ボウキや穂垣・地下茎も細工物など、ゼロエミッションの典型的素材として全ての部分が余すことなく利用されています。

モウソウチク
モウソウチク

モウソウチク[孟宗竹]
国内では最大になるタケで稈は20m以上にもなります。
材質が劣るためマダケほどではありませんが、建築材・垣根など広く利用されています。最大の用途は食用タケノコです。


キンメイチク&ギンメイチク&オウゴンチク[金明竹&銀明竹&黄金竹]
左のタケは、芽溝部に緑色は残りますが、稈全体の黄色を金色に見立ててキンメイチクと呼ばれます。
真中のタケは、キンメイチクとは逆で、芽溝部が黄色で稈が緑色になることから対比的にギンメイチクと名付けられたとされます。
全体が黄褐色の右のタケはオウゴンチクと呼ばれます。
マダケの変種で、どれも鑑賞・造園用に利用されます。
(ちなみに、モウソウチクの変種にもキンメイモウソウ・ギンメイモウソウ・オウゴンモウソウという種があり、同様に造園用に利用されます)

キンメイチク
キンメイチク
ギンメイチク
ギンメイチク
オウゴンチク
オウゴンチク


キッコウチク
キッコウチク

キッコウチク[亀甲竹]
モウソウチクの変種で、亀の甲羅のように見える節が特徴的です。造園用に利用されたり、ユニークな節を生かして、床の間の飾り柱や花器として利用されます。
節の盛り上がりの小さいブツメンチク[仏面竹]もありますが、同一種とするか別種とするかは専門家内でも意見の分かれるところです。

ホテイチク
ホテイチク

ホテイチク[布袋竹]
布袋様のお腹のようにぷっくらと膨らんだ節が特徴的で、釣竿のグリップや各種の細工物に用いられます。タケノコもおいしく、特に九州地方で好んで食されます。
高さ2〜3mでも比較的整った樹形のため、私たちが室内装飾で天井高の高くない場所に使う竹は、本種が多いです。

クロチク
クロチク

クロチク[黒竹]
葉以外の稈・枝・地下茎などが黒褐色・黒紫色をしています。稈の先端部までが直立した細身の稈や小さい葉が繊細な印象を与えることから、坪庭等の庭園材料として好まれます。また、色を生かし掛軸や筆軸など民芸品としての需要も高いです。

ハチク
ハチク

ハチク[淡竹]
維管束が多いため細かく割りやすい材質から、茶筅(ちゃせん)の材料として最適です。
また、タケノコには甘みがあり、実はモウソウチクよりおいしいことは意外と知られていません。

ソロバンダケ
ソロバンダケ

ソロバンダケ[算盤竹]
節がそろばんの珠のような形に膨れる珍種。筍は食用。
肉厚で非常に硬い材質のため、原産地の中国では杖の材料として用いられます。


※番外編 ~ササ~

カンザンチク
カンザンチク

カンザンチク[寒山竹]
一般的イメージとは違いますが、稈鞘がはがれ落ちないため分類上ササです。稈長は5〜7mになり、ササで最大とされます。葉が多く防風林として植裁されます。本種のタケノコがタケ・ササ類の中で最も美味とされていますが一般的には知られていません。

チゴカンチク
チゴカンチク

チゴカンチク[稚児寒竹]
これもササです。
シュチク(朱竹)・ベニカンチク(紅寒竹)の別名を持ち、赤くなる稈が特徴で観賞用に供されます。皮を早めにはがし稈に日をよく当てると赤の発色が良くなります。
ただ、稈の寿命は短く3〜4年程度です。

 今でこそプラスチックや金属などの他素材に取って代わられた面もありますが、かつて私たちの周りには、日常生活に欠かすことのできない竹製品が数多くありました。それは、種類こそ違えど、タケがどこにでも生えており誰でも自由に利用できたからだと言えます。私たちも、種類ごとに違うタケの特徴を生かし多用途に活用してきました。
 同じタケでも、その特徴で利用方法も千差万別でおもしろいですね。古くから私たちの生活と密着し、文化や風土の構築にも貢献してきた樹種だということがわかります。