- 2011.08.01
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「太陽の花“ヒマワリ”」
7月の終わりにかけて、気温もぐんぐん上昇してきました。太陽が燦々と降り注ぐこの季節を代表する花といえば、ヒマワリが挙げられます。今月はヒマワリにまつわるお話です。
ヒマワリは漢字で「向日葵」。まさしく太陽をイメージさせる大輪の黄色い花がその語源とする説もありますが、最も有力とされているのは“ヒマワリの花が日(太陽)を追って一日中動く”とされたことに由来するという説です。しかし、残念ながらこの説は正しいとは言えないことが分かっています。
植物が光に向かって生長する性質を「向日性(こうじつせい)」と呼びます。向日性は大抵の植物が持っている性質ですが、動きが顕著なことからヒマワリの例が有名です。しかしそのヒマワリも日を追って動くのは茎が成長を続けているつぼみの頃までで、花が咲いた後は成長が止まりほとんど動かないことが実験により確かめられています。若い苗は、朝は東→昼は南→夕方は西、と太陽を追う運動を繰り返します。つぼみが色づく頃には徐々に西への動きはなくなるものの東へ向く動きは継続し、開花前のつぼみは東を向いているものが多く、花も東に向かって咲くことになります。咲いた後は日を追う運動は見られません。このことからヒマワリの花は東に向かって咲く、というイメージも強いですが、ヒマワリ畑として密集して植えられることが多いため、光環境や温度・湿度の違いなど周囲との競争の影響で、実際には全ての花がきれいに東に向くことはあまりありません。
ヒマワリの学名Helianthus annuus は、ギリシア語の「太陽=helio」と「花=anthus」から来ています(annuusは一年草の意)。原産国アメリカでも、英語ではsunflower(太陽=sun、花=flower)と呼ばれ、その由来は花の姿にあり、「ヒマワリ」のように“日を追って動く”という意味は含まれていません。確かではありませんが、ヒマワリがヨーロッパへ渡った際に宣伝文句として「この花は太陽を追って回る不思議な花だ」という特徴が付け加えられたのではないか、とされています。
太陽と同じ形をした花が、自分の仲間の姿を追って回る―――。つぼみ頃までは実際に太陽を追って動くだけに、人々がそうイメージしたくなるのも無理はないのかもしれません。ヒマワリといえば、放射性物質を体内に蓄積することで土壌汚染改善に寄与するとして近日注目を浴びています。この機能:ファイトレメディエーション(植物を用いた環境浄化)については、いずれ本コラムでも取り上げたいと思っています。