- 2012.02.01
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「一足お先に春化粧 梅」
まだまだ寒い日が続きますが、2月になると春の訪れを告げる梅の花が咲き始めます。古来から日本人に愛されてきた梅の花で、寒い時期ももう一踏ん張りできそうです。
春告草(ハルツゲグサ)や風待草(カゼマチグサ)という別名を持つ梅はバラ科のサクラ属の植物です。江戸時代以降、花見といえば桜の花を見ることとされていますが、奈良時代以前は「花」といえば、桜より梅を指すことの方が多かったそうです。
園芸用語では、観賞用の梅を「花梅(ハナウメ)」といい、果樹の梅を「実梅(ミウメ)」と呼んでいます。梅の栽培は歴史が古いため、数百種類の品種に分かれています。観賞用の梅の品種は約300種類、食用の果樹は約100種類あると言われています。お正月などによく用いられる吉祥の象徴として「松竹梅」がありますが、これは中国の「歳寒三友(さいかんさんゆう)」が入ったものと言われます。「歳寒三友」とは画題のひとつで、松と竹は冬期に緑を保ち、梅は花を開くことから、こう呼ばれるようになったとのことです。梅は等級としてこの言葉が使われる時は最下位の3番目を指しますが、本来この3つは対等な関係だったようです。ただ、寿司屋などでは「並」と注文するよりも「梅」と植物の名前に置き換えた方が美しいため、等級として用いられるようになりました。
◯梅と歴史のアレコレ
梅といえば梅干し!梅干しは有機酸と塩の持つ殺菌効果で、永年保存することが可能で、40・50年前の梅干しは当たり前といいます。奈良県には、日本に現存する最古の梅干しがあり、なんと1576年ものだそうです。1576年は織田信長の長篠の合戦の翌年で、安土城を築いた年でもあります。それほど古い梅干しが現存し、なおかつ今でも良好な状態で保存されているようなので、梅干しと塩の殺菌効果は絶大ですね。
鎌倉時代には、梅干しは僧侶の間で茶菓子として、武士には戦の際の縁起物として梅干しが食べられていたようです。戦国時代には携帯食としても利用されていました。
梅は中国では紀元前から酸味料として用いられており、塩とともに最古の調味量だとされています。日本語でも使われる良い味加減や調整を意味する単語「塩梅(あんばい)」とは、元々は梅と塩による味付けが美味くいったことを示した言葉です。◯梅のことわざ
「梅根性に柿根性」
梅根性とは、梅が煮たり焼いたりしても酸っぱさが一切変わらないという性質から「頑固な人」「性格が変わらない人」を指し、良い意味で使われます。一方の「柿根性」とは、干すと一日で甘くなってしまい、「変わり身の早い性質の人」を指す批判的な言葉として使われます。「梅木学問と楠学問」
梅は何年経っても大木にならない性質の木ですが、これに因んで「成長は早いけれど、大木に育たない」小人の学問を指しています。一方の楠は「成長は遅いけれど、将来は天を衝くような大木に成長する」ことから、コツコツと学問をすることを指しています。2月になるといろいろなところで梅祭りが開催されます。今年は昨年秋の暖かさが続いた天候の影響で開花が少し遅めなようです。花を観て楽しむのはもちろんですが、その名前にも注目です。歴史が古いだけあって種類は豊富で、古典的な美しい名前の「古城の春(コジョウノハル)」や「緋の袴(ヒノハカマ)」。1本の木の同じ枝に淡紅色、紅色、絞り、白の4色の花が咲く「思いのまま」や、なんだか嬉しい名前の「開運(カイウン)」など多様です。
そんなところにも注目しながら、梅林散歩はいかがでしょうか?