2012.11.01

落ち葉の季節

晩秋の11月。昼夜の温度差が大きくなり、木々の葉も色づき始めました。色づいた葉がはらはらと落ち始めたら、もう冬はすぐそこです。今回のコラムでは冬の訪れを教えてくれる落ち葉に注目してみたいと思います。

—落葉樹と常緑樹

まず、樹木には落葉樹常緑樹があります。一般的に1年以内で枯れてしまう葉を持ち、寒気または乾燥期の前に一斉に落葉するものが落葉樹、1年以上生き続ける葉を持つものが常緑樹と言われています。また、この2つは葉にも違いがあり、落葉樹の葉は薄くて比較的柔らかく、表面は明るい緑色でつやは少なめです。常緑樹の葉は厚みがあって比較的硬く、表面は濃い緑色でつやがあります。(落葉樹の葉でも常緑樹のようなものも多数存在します。)落葉樹は被子植物のうちで特に双子葉類に多く、湿帯に分布するほか、熱帯のモンスーン地帯に分布するものも含みます。単子葉類には少ないですが、サルトリイバラなどの例があります。裸子植物では、湿帯に分布するイチョウ、メタセコイヤ、ラクウショウ、亜寒帯落葉樹としてはカラマツなどがあります。

サクラ◀サクラ(双子葉類)

サルトリイバラ◀サルトリイバラ(単子葉類)

イチョウ◀イチョウ(裸子植物)

カラマツ◀カラマツ(亜寒帯落葉樹)

—落葉樹が秋に葉を落とすのはなぜ?

落葉樹は春に冬芽が発芽して葉を展開し、夏の間に盛んに光合成をして自らを生長させたり、種子を作るための養分を貯蔵します。秋になり気温が下がってきた時、薄い葉を持つ落葉樹が緑の葉をつけたままだと葉の葉緑体での光合成能力が落ちて植物体を維持出来なくなります。また、乾燥する冬には葉裏の気孔からどんどん水分を奪われてしまい、木全体が死んでしまいます。そこで、生育に不利な時期には一度に落葉して、休眠芽や冬芽の形で休眠します。一方常緑樹は常緑といっても全く落葉しないわけではありません。目立たないだけで、毎年新しい葉が展開して古いものから落葉していきます。落葉には体内の老廃物や大気の汚染物質を外に吐き出す作用もあります。

—落ち葉の効果

本格的な冬に向けて葉を落とす樹木たち。その落ちた葉は落ち葉を食物とするダニやトビムシ、菌類や細菌類に分解されそのまま土に還り、養分としてまた植物を潤す成分となります。落ち葉が分解され、発酵する際に発せられる熱は地面を温める効果もあります。また、ある研究によると植物の種類によって差はありますが、落ち葉の中に含まれる化学物質が雑草などの発芽や生長を抑制する作用を持っています。この作用の事を“アレロパシー作用(多感作用)”といい、植物自体の身を守る方法として知られています。よく知られているアレロパシーには、セイタカアワダチソウの生きた根から放出される化学物質が生育域に侵入しようとする植物を抑制する現象や、クスノキの葉からは虫除けで知られる“樟脳”の原料が抽出され、害虫への自衛作用となります。落ち葉にもアレロパシー物質が含まれており、自身の生育域に入ってくる植物や雑草を防ごうとしているのです。

◯アレロパシーを有する植物◯
セイタカアワダチソウ/クルミ/サクラ/マツ/ソバ/ヨモギ/ハリエンジュ/アスパラガス/ヒガンバナ/キレハイヌガラシ/レモン/ユーストマ/ナルトサワギク/ギンネム/アカギ/ホテイアオイ/ナガボノウルシ/ナガミヒナゲシ etc.

セイタカアワダチソウ◀セイタカアワダチソウ

—垣根の垣根の曲がり角 たき火だたき火だ落ち葉焚き

子供の頃、この季節になると思わず口ずさみたくなる唱歌「たきび」。この唱歌の中に落ち葉焚きという言葉が出てきます。落ち葉焚きとは、晩秋に落ち葉を集めて焚き火をする事で、私たち日本人は晩秋から冬にかけての季節の風物詩と捉え行ってきました。単に燃やすだけではもったいないという事で、一緒に焼き芋を楽しんだりも。今は消防庁や地域自治体の条例により焚き火は禁止されてしまっていますが、落ち葉のこういった楽しみ方も情緒があって良いですね。

落ち葉焚き◀落ち葉焚き

いかがでしたか?これからの季節、その上を落ち葉を踏みながら歩くのが楽しい季節です。紅葉と一緒に落ち葉の奏でる音色を楽しんでみては?