- 2012.12.01
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クリスマスの花? “クリスマスローズ”
クリスマスの名前を持つ“クリスマスローズ”。地味な花のイメージを持たれがちですが、実は可憐で強く、華やかな花です。今回はそんなクリスマスローズについてご紹介します。
―クリスマスローズとは?
科名:キンポウゲ科
属名:ヘレボラス属
性状:常緑多年草
原産地:ヨーロッパ~西アジア〈ヘレボルス・ニゲル/Helleborus niger〉
ヨーロッパ中部から南部、西アジアまで分布します。有茎種ですが、無茎種との中間的な姿をしています。背丈は20cm程で、花色は白です。開花時期がクリスマスと重なる為、“クリスマスローズ”というと、本来は本種の事を指します。ニゲルは「黒い」の意味で、乾燥した根の色に由来しています。
〈ヘレボルス・オリエンタリス/Helleborus orientalis〉
ギリシャ、トルコなどに分布する無茎種で、レンテンローズとも呼びます。こちらの種の開花時期はニゲルと異なり、2~3月頃花を咲かせます。本種を元に他種を掛け合わせて作られた園芸品種群はオリエンタル・ハイブリットと呼ばれ、暑さに強く日本の気候でも良く育つ為、日本の園芸市場でクリスマスローズとして出回っているもののほとんどがこのレンテンローズになります。
クリスマスローズはキンボウゲ科クリスマスローズ属の花で、クリスマスの時にだけ花を咲かせるものだけをクリスマスローズと呼んでいます。クリスマスローズを含む、キンポウゲ科クリスマスローズ属はヨーロッパから西アジアにかけておよそ20種、中国に1種が知られる多年草です。花のように見えるものはガクで、白または桃色をしており、下向きに咲かせます。ニゲル・オリエンタリス共に有毒植物です。
クリスマスローズ(ニゲル)が日本に初めてやってきたのは明治初期と言われています。初めは観賞用ではなく、薬草として試験的に栽培されていました。属名のヘレボラスはヒポクラテスなどが用いた名前で由来ははっきりとしていませんが、一説では学名のHelleborusは、ギリシャ語の「helenin(殺す)」と「bora(食べ物)」からきていると言われており、これは茎葉、根などに有毒成分のサポニンを有するところにちなむとされています。
―別名は“雪起こし”
クリスマスローズは可憐な姿に似合わず、とても強い花です。下向きに花を咲かせる理由は明らかではありませんが、冬の凍った大地で雪を持ち上げて花を咲かせ自生している為、雪から花を守る為ではないかと言われています。その様子から、別名“雪起こし”とも呼ばれています。
―花色と花形が豊富
クリスマスローズというと、濁った色の地味な花というイメージを持つ事もあるかもしれませんが、80年代に入ると盛んに交配・品種改良が行われ、鮮やかな花色が続々と登場しています。最近では常緑の葉の色や形のおもしろさにも注目が集まっています。クリスマスローズの花色は、青以外は揃っていると言われる程豊富です。模様のバリエーションも豊富で、花びらに縁取りが入るもの、スポットが入るもの、花びらの裏表の色が異なるもの、花びらごとに色が違うものなど様々です。花形は株によって異なります。花びらが丸いもの、花びらの先が尖ったもの、丸い花びらでカップのように咲くものなどがあります。
ここでタイプ別にご紹介します。
◯ネクタリー(Nectary)◯
花の中心部の色が濃く、目のように見えるもの。“フラッシュ”という別名もあります。
◯ダブル(Double)◯
八重咲きのもの。
◯セミダブル(Semi-Double)◯
花の中心部にある蜜線という部分が膨らんで花びらのように見えるもの。花が終わると蜜線が散り一重になります。
◯リバーシブル(Reversible)◯
花びらの内側と外側の色が異なるもの。
―クリスマスローズの伝説
クリスマスローズにはこんな伝説があります。
3人の博士が眠れる赤子イエスの足元に、黄金・乳香・投薬(もつやく)の捧げものを置くと、羊飼いの少女が側で泣いていました。少女もこの生まれたばかりの赤ん坊を深く愛していたのですが、大変貧しく、またその冬はことのほか厳しい寒さで雪も深く、お祝いに摘み取れるような花もなかったのです。その時、天使が通りかかり、羊飼いの少女が泣いているのを見て、身をかがめ雪をすくい上げました。少女は1本の白い花が、なかば雪に埋もれながら咲いているのを見つけました。そして、「黄金などの宝物でさえも、この清純な花と比べたら、神の子に相応しいものではありません。」という天使の声を聞いたのです。それがクリスマスローズだったという伝説です。(「クリスマスローズよくわかる栽培12ヶ月」NHK出版より引用)
その時の花とされているのがヘレボルス・ニゲルです。この他にもクリスマスローズにはいろいろな伝説がありますが、こういったお話が生まれるのもクリスマスローズの魅力の1つと言えるかもしれないですね。
「追憶」「いたわり」「私を忘れないで」「慰め」「スキャンダル」などと、少し寂しく儚い花言葉が多いクリスマスローズ。その意味とは裏腹に冬の寒さにも負けない強い一面や、見た目の美しさで私たちを魅了してくれます。日本では2月中旬~3月下旬と、少しクリスマスの時期とずれてしまいますが、クリスマスとは結びつけずにクリスマスローズとして楽しんでみるのも良いかもしれないですね。
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