- 2013.05.01
-
美人の代名詞 “牡丹”
桜の季節も終わり、新緑の季節がやってきました。街中がグリーンで覆われるこの時期は気温も丁度良く、1番過ごしやすい時期です。そんなグリーンの中にひと際目立つ花を咲かせる“牡丹(ボタン)”は、この時期一番見頃を迎えます。さて、今回のコラムではそんな牡丹をご紹介しましょう。
— “牡丹”とは?由来と歴史
科属名:ボタン科ボタン属
花期:4〜6月
花色:紅、ピンク、紫、白、黄、黒 etc.
原産地:中国、世界の熱帯〜温帯
花言葉:富貴、高貴、壮麗、恥じらい寒さには比較的強く地植えにしても冬を越すのは容易ですが、夏の暑さに弱い為、関西の平地などでは少し栽培しにくい植物です。今日多くの品種が栽培されている牡丹ですが、元々の木本性の牡丹の原種は世界中に3種類しかなく、全て中国が原産地となっています。
園芸品種としては、春牡丹、寒牡丹、冬牡丹などがあり、花色は紅、ピンク、紫、白など。花びらの数は一重、八重、千重、万重、大輪、中輪などで、咲き方は平咲き、半抱え咲き、抱え咲き、盛り上げ咲き、獅子咲き、風車咲き、平盛り咲きなど様々です。「牡丹(ボタン)」は中国名の「牡丹(モウタン)」の日本読みです。中国で「牡丹」という名前がついたのは、一説によると、明の時代は赤色の花が最高級品と評されていた為、赤色を指す「丹」と、種子は出来ても実生は必ずしも親と同じ赤花にならないので、子が出来ない「牡(オス)」と考えて「牡丹」と名付けられたと言われています。
この牡丹、古代中国の原産地方では薪として利用していましたが、3世紀頃から根は薬用(鎮痛や消炎など)に利用されていました。園芸植物として栽培されるようになったのは5〜6世紀の隋の時代に入ってからで、6〜9世紀の唐の時代には多くの人々に広まり、品種改良も盛んに行われるようになりました。
牡丹が日本に渡来したのは奈良・平安時代で、遣唐使、留学生、僧侶などが中国から持ち帰ったと言われています。鎌倉、室町、桃山と受け継がれ、江戸時代には我が国の美意識に沿うように品種改良が重ねられ隆盛をみるに至り、明治以降は生産園芸としても発展し、今日に至っています。—美人の代名詞
昔から美しい女性の事を「立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花」なんて言いますが、なぜこれらの花が選ばれたのかご存知でしょうか?それぞれの理由から美人の本質を見極めてみましょう。
“立てば芍薬”
芍薬(シャクヤク)はスラリと伸びた茎の先端に美しい花を咲かせます。その香りもたおやかで、フランスではしなやかで爽やかな香りのするワインを「芍薬のような香り」と言うそうです。姿も香りもまさにスラッとした美しい女性そのものというわけですね。
“座れば牡丹”
芍薬も牡丹も同じボタン科なので花自体はよく似ています。しかし、芍薬が草なのに対し牡丹は木。その違いから、牡丹は枝分かれした横向きの枝に花を付ける為、まるで座っているかのように見え、鑑賞する時も座って鑑賞する方が綺麗に見えます。中国では花の王と呼ばれ、華やかさの象徴とされています。
“歩く姿は百合の花”
百合はしなやかな茎の先にややうつむき加減に花を咲かせます。そして風を受けて揺れる様子は、まるで女性が優美に歩いているように見えるでしょう。甘い香りは香水としても人気があり、こうした花のイメージから自生の名前にもよく用いられています。
—着物の柄としての “牡丹”
あまり普段着物を着る機会は少ないかと思いますが、着物を着る時、その柄の季節を考えるのが少し難しかったりします。牡丹柄は魅力的な柄の1つですが、着る時期で1番悩む種類だったりもします。
牡丹柄を着る時期として最適なのが5月のこの季節です。4月上旬から6月下旬が旬だと言われています。
ちょうど5月はGWなどの連休もあるので、牡丹柄の着物を着て、普段とひと味違ったお出かけなんていうのを体験してみるのもいいかもしれませんね。いかがだったでしょうか?3月にご紹介しましたモモよりもどこか少し大人な雰囲気を持つ牡丹に今回は注目してみました。華やかな印象を持ちつつ、どこか凛として美しい佇まいな牡丹。そんな牡丹のような女性は、きっとどの時代でも憧れの存在のはず…。