- 2013.06.01
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食虫植物と“◯◯◯”
緑が一層深い色合いになっていくにつれ、湿度と共に梅雨の季節がやってきます。関東もついに梅雨入りしたそうですね。梅雨の時期、夜になると雨の音に混じりながら虫の鳴き声が大きくなり、春から夏への移り変わりを告げているかのようです。さて、今回のコラムではそんな虫達の天敵“食虫植物”と、その“食虫植物”と共存している意外な生き物についてご紹介します。
― “食虫植物”のアレコレ
“食虫植物”と言えば、その名の通り、虫や小動物を捕まえて消化し、栄養分として吸収する植物の事を言います。他の植物とは違いなぜ虫などから栄養分を得るのかご存知ですか?食虫植物も他の植物と同じように、太陽の光によって自分自身で栄養分を作っているのですが、元々食虫植物が生存する場所は養分の少ない土地である為、足りない分を虫などから得るようになりました。
食虫植物は、全世界では12科19属が現在確認されており、細かい種類まで分類すると600種以上あります。また、種以下の変種や園芸上の分類や、人工交配種なども含めると、なんと2000種以上が存在すると言われています。
〈食虫植物の種類〉
◯モウセンゴケ科:モウセンゴケ属、ハエトリグサ属、ムジナモ属、ドロソフィルム属
◯タヌキモ科:タヌキモ属、ゲンリセア属、ムシトリスミレ属
◯ウツボカズラ科:ウツボカズラ属
◯サラセニア科:サラセニア属、ヘリアンフォラ属、ダーリングトニア属
◯フクロユキノシタ科:セファロタス属
◯ビブリス科:ビブリス属
◯ロリズラ科:ロリズラ属
◯ティオンコンフィルム科:トリフィオフィルム属
◯ツノゴマ科:イビセラ属、プロボスシデア属
◯パイナップル科:ブロッキニア属、カトプシス属
◯ホシクサ科:パエパランツス属
この中でも私たちがよく目にする種類がモウセンゴケ、ハエトリグサ、ウツボカズラなのではないでしょうか?これらの種類を簡単にご紹介しましょう。
【モウセンゴケ】
科属名:モウセンゴケ科モウセンゴケ属
原産地:北半球の高山・寒地葉には腺毛があり、粘液を分泌して小さな昆虫を捕まえます。昆虫を捕まえると開花が盛んになり、多数の種子を形成する事が出来ます。葉は鮮やかな赤色で、これが緋毛氈(ひもうせん)に例えられました。
【ハエトリグサ】
科属名:モウセンゴケ科ハエトリグサ属
原産地:北アメリカ4枚から10数枚の葉をロゼット状につけ、細長い軍配形の葉柄の先に捕虫葉と呼ばれる二枚貝のような形の葉を広げているのが特徴です。捕虫葉の内側には片側に3本ずつ感覚毛と呼ばれるセンサーが生えており、獲物がこのセンサーに短時間に2回以上触れると葉が素早く閉じ、獲物を捕まえます。
【ウツボカズラ】
科属名:ウツボカズラ科ウツボカズラ属
原産地:アジア・オセアニア・マダガスカル分泌液で虫を誘い込み、葉が変形した捕虫器の中に虫が落ちると、虫は滑って上がれなかったり、種類によっては返しがあり外へ出られなくなります。蓋がついていますが、これは雨が入りづらくする為のもので、虫が入っても閉じる事はありません。
―食虫植物の中で繁殖する◯◯◯
大体の虫であったり小動物が食虫植物の栄養分となってしまいますが、なんと食虫植物の分泌液の中で繁殖する生き物がいる事が発見されたそうなのです。さて、どんな生き物だと思いますか?
ちなみにその生き物が繁殖の場として選んだのが、ボルネオに多く観られる食虫植物の1つで“ネペンテス・アンプラリア”です。近年そのネペンテス・アンプラリアから旧世界最小の“カエル”が発見されました。このカエル、壷型の捕虫蓑に卵を産みつけ、オタマジャクシはその中の液体の中で育つというから驚きです。方や捕獲されるものもいれば、このように住処にしてしまっているものもいるなんて、生き物の世界はまだまだ興味深い事が多いですね。さて、いかがだったでしょうか?普段目にする植物とはちょっと違った面を持つ食虫植物。その個性的な見た目が癖になってしまう人もいるのでは?食虫植物展なんてものもやっていたりするので、この夏はこのひと味違った植物に注目してみるのも良いかもしれないですね。
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