2013.09.01

続・人と植物、その歴史

まだまだ暑さの残る9月。今年も残暑が厳しそうです。さて、今回のコラムでは6月のコラム» 「人と植物、その歴史」の続きを書いていこうと思います。森林が生まれ、のちに出現した種子植物。これらの先には何があるのでしょうか?

—形の変化

元々微生物から進化し大きくなった植物は、はじめ藻のような単純な形をしていました。しかし次第に植物自身が役割分担をしていくようになり、それに合わせて形も変化していきました。これが今私たちがよく目にする植物の形となったのです。

◯植物の役割分担◯

・光合成をし養分をつくる … 葉

・種子をつくり子孫を残す … 花

・自身の身体を支える   … 茎

・土の中から水を吸収する … 根

葉で行われる光合成は、葉緑体という細胞が空気中から取り入れた二酸化炭素と根から吸収した水を使って糖を生産する事を言います。植物はこの糖を原料にデンプンや炭水化物、タンパク質の元になるアミノ酸、脂肪をつくる脂肪酸やグリセリンなどといった物質を合成します。そしてこの先、植物はまた2つの種類へと分かれていきます。

—裸子植物と被子植物

植物の種子の中には“胚(ハイ)”というものがあります。この胚が成長する事でおとなの植物になるのです。雄しべの頭である柱頭に花粉が付き、受粉します。受粉し成長したものが胚です。その胚が入っている場所は“胚珠”と呼ばれ、そこが成長して“種子”となるのです。
初め種子植物は胚珠が剥き出しの状態でした。こういった植物を“裸子植物”といいます。ただ、裸子植物には欠点がありました。剥き出しの為、胚珠が傷ついてしまうのです。そこで胚珠を保護するカバーのようなものを持つ植物が生まれました。これが“被子植物”です。被子植物の持つ胚珠の周りをカバーしているものの事を“子房”といいます。その子房が成長して“果実”となるのです。

裸子植物:マツ/スギ/イチョウ/ソテツ など
マツマツ スギスギ

被子植物:アブラナ/エンドウ/サクラ/カキ など
アブラナアブラナ エンドウエンドウ

ここまでは植物とはどういうものか?を説明してきました。次の項では現代に着目し、今問題視されている絶滅現象について書こうと思います。

—絶滅と生物の多様性

多細胞生物が多様化を始めた6億年前以降の歴史の中で、生物は大絶滅の現象に5回見舞われました。その中でも最大のものが、約2億5千万年前のペルム紀とトリアス紀の境界で起こり、海中では無脊椎動物の96%が絶滅、陸上の動物も多くが絶滅しました。そんな大絶滅の危機から見事に復興し、全体的な生物多様性が増加している事は確かです。しかし新種の誕生や多様性が復活するには膨大な時間がかかります。恐竜が絶滅した白亜紀最後の大絶滅では植生も大きく破壊されました。その失われた森林の多様性が元に戻るには、約100万年もの時間を費やしました。

今現在人類が引き起こしている絶滅現象は、地質時代の平均的な絶滅速度に比べると100倍から1000倍の速度で進行していると言われています。人類が存在しなかった時代の自然は、現在のような生息地の消失や分断、汚染や気候変動、外来種の進入などの負の影響をほとんど受けていませんでした。一度失われた種は二度と復活しません。出来るだけ多くの種が生活する生息環境と、巧妙な種間関係の理解と思いやりを深め、私たちそれぞれが生活する地域の保全とそういった環境に対する理解がこの先必要となっていくでしょう。でなければ私たちは自分たち以外の生物を失う事になるかもしれません。

いかがでしたか?今回のコラムでは以前の「人と植物、その歴史」から少し先に進んだお話でした。私たちと植物を含めた生物はとても近い距離で共存しています。相互のそういった関係を上手く続けていくためにも、私たちは現状を受け止め、しっかりとした対応と理解をしていきたいですね。これから何十年経っても、たくさんの生き物に囲まれた生活が送れていますように。