2013.12.01

“植物のイルミネーション”

だんだんと気温も下がり、冬の訪れを感じる12月。先月辺りから街はクリスマスのイルミネーションで飾られ、キラキラと華やかな光に気持ちも明るくなります。この時期、明るく輝くイルミネーションが印象的ですが、植物の中にも光るものがあるのはご存知ですか?さて、今回のコラムではそんな“光る植物”についてお話しします。

—光る植物とはどんなもの?

光る植物とは言っても、先程述べたようなイルミネーションのように強く光るのではなく、どこかぼんやりと光ります。植物を含めた生物発光はルミネサンスの一種で、冷たい発光とも言われています。ルミネサンスとは、物質が電磁波の照射や電子の衝突などによってエネルギーが励起され、低いエネルギー状態の分布数に対する高いエネルギー状態の分布数の比が熱平衡の状態の時と比較して大きい状態になった時に起こる自然放出の事を言います。冷たい発光と呼ばれる所以は、放射する光の約20%以下しか熱放射を起こさないからであり、蛍光や燐光、光の発射とは違う物です。発光は暗黒条件下で生物のエネルギーによって光を放ちます。例えばヒカリモヒカリゴケは反射光を強く放つもので発光ではありません。
光る仕組みは化学反応によるもので、ルシフェリン-ルシフェラーゼ反応と呼ばれています。発光する生物の多くはこれを自力で合成しますが、発光する生物を共生させ光るものもいます。

先程例に上がったヒカリモやヒカリゴケですが、植物の場合この2種のように光の反射によって発光しているように見えるものが多いようです。例えばヒカリゴケは、原糸体のレンズ状細胞が暗所に入ってくる僅かな光を反射する事によって発光しているように見えます。また、レンズ状細胞には葉緑体が多く存在するため、反射光はエメラルド色となります。このヒカリゴケは生育環境の変化に敏感、僅かな環境変化でも枯死してしまいます。そのため生育地である洞窟の開発や大気汚染、乾燥化の影響を受けその個体数は減少し、絶滅が危ぶまれていると言われています。日本においてその生育地の大部分は国立公園内にあり、採取は規制され、天然記念物に指定されています。

〈光る植物一例〉

◯ヒカリゴケ◯

ヒカリゴケ

科属名:ヒカリゴケ科ヒカリゴケ属
分布:ロシア極東部、ヨーロッパ北部、北アメリカ、北海道、本州中部地方以北

◯ヒカリモ◯

ヒカリモ

科属名:オクロモナス科オクロモナス属
分布:世界各地

日本各地の水の綺麗な洞窟や、山陰などの池に生息する藻類で、暗闇で光を反射させる事で黄金色に光って見えるのが特徴です。普段は単細胞生物として長短1本ずつの鞭毛で移動します。周年構成される生活環のうち、通常は4月から6月の浮遊期に疎水性の柄の上に複数の層で構成される細胞塊を形成し、それが鏡のように光を反射させ黄金色に光っているように見えます。光る仕組みについては未だ十分に解明されていないのが現状です。

◯ツキヨタケ◯

ツキヨタケ

科属名:ツキヨタケ科ツキヨタケ属
分布:朝鮮半島、ロシア極東部、中国東北部、ヨーロッパ、北アメリカ

紫褐色または黄褐色のかさで、柄は短く、つば状の突起が特徴です。新鮮なものは中に含まれる成分のランプテロフラビンの効果により、暗闇で白色のひだが青色から蛍光緑に発光しますが、熟成が進むと発光しない場合もあります。
このキノコは有毒種で、食後薬30分から3時間で嘔吐や下痢などの中毒症状が現れ、見るものが青く見える幻覚症状を伴う場合もあります。最悪の場合は脱水症状などで死に至る事もあるので注意が必要です。

—“光る”植物の発明

本来の意味で“光る”植物の研究は、実は1980年頃から行われていました。ケンブリッジ大学の発光バクテリアの研究に刺激され企画されたこの「Glowing Plants」というプロジェクトは、光る植物を人工の光と置き換えようというプロジェクトで、生物発光に必要な酵素〈ルシフェラーゼ〉を使い、バクテリアや植物が作られるようになりました。まだまだ研究段階ですが、現時点で既に小さな植物を発光させる事に成功しているそうで、研究が進められ、もっと大きな植物が光るようになるのか…これからの研究の成果が楽しみです。

いかがでしたか?今回は普段あまり目にする事の出来ない“光る植物”について注目してみました。近年いろいろな研究がされていますが、これからもっと研究が進み、いつかはイルミネーションではなく木そのものが光ってクリスマスの演出をする…なんて日が来るかもしれません。そんなクリスマスもまた幻想的で見てみたいですね。