- 2014.03.01
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花の“香り”
今年の冬は長く、寒さの厳しい日々が続きました。ようやく暖かい日が続くようになり、少し前に梅は満開を迎えています。そんな梅の側を通ると、甘い香りが鼻をくすぐり、春の訪れが近い事を知らせてくれるようです。さて、今回のコラムではそんな花の香りについて書こうと思います。
暖かくなり、春がやってくると今まで眠っていた蕾がいっせいに開き、華やかな色合いの花びらと香りで私たちを楽しませてくれます。香りは花の特徴の一つですが、しかし蕾の状態では香りはしません。蕾が開く事で香りが発生するのですが、なぜ蕾の状態では香りがしないのでしょうか?
甘い香りを漂わすゲッカビジンの開花を側で見ていたとしても、蕾の時にはほとんど香りはありません。しかし、花が開くといつのまにか強い香りが漂ってきます。なぜそのような現象が起こるのか、まず考えられるのは蕾の中に香りが隠されており、花びらが閉じているため香りが外まで出てこないという可能性です。もしそうであるならば、蕾を無理矢理開いてみたら中から香りが漂ってくるでしょう。しかし、開く前の蕾をどんなに丁寧に開いたとしても、中から香りが漂う事はありません。
閉じた蕾に香りが隠されていないとすると、香りは蕾が開くにつれて作られていく、といった可能性があります。しかし、香りの成分は何段階もの反応で作られる複雑な物質が多く、蕾が開く短時間で作られるようなものではないようです。“花が開くと香りが漂う”
上記したように、花の香りのメカニズムは、香りになる直前の物質が蕾に作られているという事です。この物質は普段発散しないように余分な構造が付いています。蕾の時に香りが発散しないように、重りがぶら下がっている状態です。花の香りは元々受粉のするのに虫たちを引き寄せる役割があるので、花が咲く前から余分な力を使わないように制御しているように思えます。蕾が開き、この重りが切り離される事によって香りは発散し漂っていきます。
花たちは子孫を残す為、様々な工夫をしているんですね。いかがでしたか?今回は花の香りのメカニズムについてのお話でした。次回のコラムではそんな花の香りがどのくらい遠くまで漂うのかをご紹介したいと思います。