2014.11.01

秋のBGM〜その他の虫たち編〜

爽やかな風と秋晴れの青空の中にトンボたちの姿が多く見られるようになってきた11月。先月のコラムでは夜鳴く虫の代表格としてコオロギをご紹介しましたが、今回のコラムではその他にも秋の夜に美しい音色を奏でる虫たちについてご紹介します。

—童謡にも歌われる“虫のこえ”

スズムシ

子供の頃、「あれ松虫が鳴いている♪」の歌い出しで有名な“虫のこえ”を歌っていたのを、この時期になると思い出します。虫のこえでは、それぞれの虫たちの鳴き声をわかりやすく説明しており、ふと街中で鳴き声が聴こえた時にこれはあの虫だ!と気付く事も多かったです。この童謡にはマツムシ・スズムシ・コオロギ(歌に出てくる鳴き声から見るとキリギリスかなと思います)・クツワムシ・ウマオイが登場するのですが、どんな虫なのかパッと思い浮かぶのは何種類いるでしょうか?
ここでこの童謡に登場する秋の虫たちをご紹介します。

◯マツムシ◯
バッタ目コオロギ科の昆虫です。主に本州(東北南部より南の地域)・四国・九州に生息しています。成虫の全長は約20〜30㎜で、頭は小さく、体は舟形で後肢が長く、体色は枯れ草や枯れ葉に合わせた淡褐色をしています。成虫は8月〜11月に出現し、主に草原や林で生活をしています。鳴き声は「チンチロリン♪チンチロリン♪」と美しい声で鳴きます。

◯スズムシ◯
バッタ目コオロギ科の昆虫です。本州・四国・九州など幅広く生息しており、日本の他には台湾や中国にも生息しています。体長は20㎜前後で、コオロギ科の昆虫の中では大柄です。白く長い触角と、メスはお尻に長い産卵管を持っているのが特徴です。翅はありますが、後翅が退化している為飛ぶ事は出来ません。成虫は7月下旬頃から出現し、9月いっぱいまでは鳴き声が聴こえます。鳴き声は「リーーーン♪リーーーン♪リィィィィリィィィィ…♪」と美しく、少し寂しげな鳴き方をします。

◯キリギリス◯
バッタ目キリギリス科の昆虫です。本州から九州地方に生息しています。2000年代以降ヒガシキリギリス(青森県〜岡山県)とニシキリギリス(近畿地方〜九州地方)の2種類に分けるべきだと考えられています。体長はヒガシキリギリスが25〜37㎜、ニシキリギリスが25〜39.5㎜で、緑色を基調とする緑色型と褐色を基調とする褐色型があります。翅の長さも個体により変異があり、ヒガシキリギリスの場合は翅が短く側面に黒斑が多いのに対し、ニシキリギリスは翅が長く黒斑は1列程度かあるいは全くありません。鳴き声は「ギーッギーッギーッチョン♪」と、ギーの連続の合間にチョンが入ります。

◯クツワムシ◯
バッタ目キリギリス科の昆虫です。関東以南から九州まで生息しています。前翅が幅広く木の葉状で、全体的にずんぐりとした体つきをしています。体長は25〜33㎜程ですが、翅端まで含めるとおよそ50〜70㎜になります。体色は緑色型と褐色型がありますが、緑色型でありながら発音器部が褐色のものなどもあります。成虫は8、9月に出現します。鳴き声は「ガチャガチャガチャガチャ…♪」と大きい鳴き声を連続的に発します。

◯ウマオイ◯
バッタ目キリギリス科の昆虫です。本州・四国・九州に生息しています。体長は20〜27㎜程で、翅端まで入れると28〜36㎜程になります。全体的に緑色ですが、頭部から背胸にかけて太い褐色条があります。前翅は雄は幅広いですが、雌は細いです。鳴き声は「スイーッチョン♪」と鳴き、この鳴き声が馬子が馬を追う声のように聴こえることから“ウマオイ”と名付けられました。

—虫の音の認識の違い

前回のコラムや上記でご紹介したように、秋の夜に聴こえる虫の音はなんだか懐かしく、心地良い気持ちになります。けれどこのように心地良さを感じるのは日本人とポリネシア人だけで、他の国の人々は雑音としてとらえる人が多いという事が脳の動きから分かったそうです。その理由として、西洋人は虫の音を機会音や雑音と同様音楽脳で処理するのに対し(左脳)、日本人は言語脳で受け止めている為(右脳)、虫の音を単なる音ではなく声として聴いているというのです。これは感受性だけでなく、擬声語・擬音語が発展している日本語を使っているからというのもあるでしょうが、このように人種によって捉え方が違うというのもなんだか面白いですね。

いかがでしたか?前回と合わせて秋らしさとも言える虫の音に注目してみました。もうそろそろその声も聴こえなくなってくると思うので、残り少し秋の夜長は虫たちの美しい声に耳を傾けてみて下さい。