2015.08.01

街路樹

梅雨が明けいよいよ夏本番。30℃を越える厳しい暑さが続き、真夏の日差しが痛い季節になりました。同時に街路樹も生い茂り緑一色へ。直射日光を遮り暑さを和らげてくれる街路樹ですが、他にも沢山の役割があるのはご存知でしょうか?今回のコラムでは街路樹についてご紹介したいと思います。

―街路樹とは?街路樹

街路樹とは、市街地などの道路に沿って植えられた樹木のことを言います。現代では標識や街灯と同じく道路の附属物として位置付けられていて、道路管理者が設置、管理をしています。

その歴史は古く、日本では奈良時代にまでさかのぼります。旅人の安全と快適な交通を確保する事を目的として果樹などが植えられたのが始まりとされています。江戸時代には、街道の整備と同時に街路樹の植栽技術や管理・運営の基礎が確立。明治時代の東京では、10種の樹種が選定されるなど本格的な街路樹計画が実施される様になりました。

10種/イチョウ・スズカケノキ・ユリノキ・アオギリ・トチノキ・トウカエデ・エンジュ・ミズキ・トネリコ・アカメガシワ

―街路樹の効果
普段何気なく通行していて、街路樹の効果について気にしていない方が多いのではないでしょうか?実は意外にも多くの役割と効果があるのです。

景観の向上として、街を美しく見せるのは勿論ですが、街や通りに統一感や個性を表す効果もあります。生活環境の面では、車の騒音を和らげる効果やヒートアイランド現象の緩和の役割とされています。また、歩道と車道の分離の役割、眩しさを遮りドライバーの運転視野を広げ交通事故を減らす効果もあります。自然環境の面では、土壌の浸食を防ぎ、小動物や昆虫のすみかと移動空間の場を与えます。さらに樹木には多くの水分を蓄えている為、防災としても火災の延焼の遅延や防止の役割になっています。他にも心理的効果として、季節の移り変わりを知らせ、癒しや安らぎをもたらす効果があり、私達の様々な助けになっているのです。

―樹種の選定
街づくりには必要な街路樹の樹種の選定ですが、何を基準にして何の樹種が選ばれているのでしょうか。

樹形が美しいものや役割でもお話した通り自然災害に強いこと。夏は日陰を作り涼しく、冬は陽があたり暖かくが基本である為、落葉樹であること。たまに常緑樹も目にしますが、冬にも緑を増やす目的から環境に応じて取り入れられたとされています。また悪臭・毒性・刺が無く、病害虫に抵抗力があるもの。強健で成長力・剪定に耐えられるもの。維持管理が容易なものなどがあげられています。

―街路樹ベスト3
現在日本で最も多く選ばれ、植えられている樹種は?

1位 イチョウ イチョウ科落葉高木 57万本イチョウ
樹齢が長く耐火力がある為、防火用樹として神社やお寺などにも用いられています。雌雄異株で秋に実る銀杏は落ちると臭いので雄株が多く植えられています。病害虫や公害、剪定にも強いのが特徴です。

2位 サクラ類 バラ科落葉高木 49万本サクラ
ソメイヨシノは明治以降全国に広まり多く植えられました。日本を代表するサクラは開花時期には私たちを楽しませてくれます。しかし花が終わると虫が付きやすい事や強い剪定を嫌い、狭くて環境の厳しい場所には向いていないのが難点でもあります。

3位 ケヤキ ニレ科落葉高木 48万本ケヤキ
日本を代表する落葉樹でヨーロッパやアメリカでも広まっています。ケヤキは繊細な枝が扇状に広がった美しい樹形をしているのが特徴。木目が美しく、丈夫なので木材としても古くから多く用いられています。

4位以降はハナミズキ、トウカエデ、クスノキ、モミジバフウ、ナナカマド、プラタナス類、日本産カエデ類

時代背景とともに植える目的や場所、樹種も変化しているのがわかりました。まずはこの上位10種を覚えてみるとより身近に感じられ、街の特徴などもわかって面白いかもしれません。この夏からは、日陰を作るだけではない街路樹にも注目してみてはいかがでしょうか?