2016.09.01

草の姫 (かやのひめ)

草の姫(かやのひめ)とは。
2015年7月1日のコラム「桃の美味しい季節になりました。」で紹介をした日本神話の登場神、イザナキとイザナミの子供です。
その名の通り、草の神様。しかし草だけではなく、暮らしを護るアレや、食卓に欠かせないぱりぱり美味しいアレの神でもあるのです。

―「かや」とは
「草の姫(かやのひめ)」の「かや」は元々「茅」と書き、主に家屋の屋根を葺くもの…つまり茅葺屋根(かやぶきやね)に使われました。その「茅」の神様ということになります。茅葺屋根は日本独自の屋根ではありませんが、日本の文化は様々な国や地域から集まり発展したものなので、そこかしこから伝承されたのでしょう。ちなみに、日本神話は奈良時代に成立した歴史書などから引用されました。
茅葺屋根とは一見、雨など通してしまいそうに見えますが、茅は一本一本が水分をはじくので大丈夫。昔の人はそれを、草の姫(かやのひめ)が家を守ってくれていると考えていたのかもしれません。

茅葺屋根

―実は身近な神様
「茅」は身近な野の生命力が宿ると考えられていたため様々な信仰があり、愛知県や三重県、北海道にも祀られている神社があります(中には漬物の神となっている神社も)。神様とは、人間が生活の中から「ありがたい(有難い)」「不思議」と感じたものの権化とされているので、草の姫(かやのひめ)は、私たちの暮らしのそばにある「草」や「野」の神格化になります。実はとても身近な神様だったようです。そして茅は繁殖力が強いことから女神とされました。また、「茅」は枯れてもなお強靭で長持ち。実用的で、生活に寄り添っている植物です。家の主要部分である屋根の神という性格を持っているので、草の姫(かやのひめ)は家宅の守護神としても信仰されています。

―だから漬物にも居る
草の姫(かやのひめ)は、野の緑も支配することから、霊力は花・野菜・雑草にまで及んでいます。よって、私たちの食卓に美味しい漬物を与えてくれる祖神や、タバコの守護神としても祀られているのです。タバコはナス科タバコ属多年草で、大きな葉を使って煙草がつくられます。タバコの産地には農耕生産に関わる神々と共に、草の姫(かやのひめ)を祀るところも多いようです。
漬物1きれ、煙草1本にも神様がいらっしゃるんですね。

草、野、漬物…。日常で素通りしてしまうものに感謝の気持ちを持つだけでも、神様を身近に感じるきっかけになります。



参考文献:戸部民夫『「日本の神様」がよくわかる本: 八百万神の起源・性格からご利益までを完全ガイド』〝鹿屋野姫神(かやのひめのかみ)〟PHP研究所(2004)