- 2012.04.01
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「植物の珍名」
春に近づき、暖かくなってくると野山や道ばたには色々なお花の姿が目に映ります。以前のコラム「植物の英名」などで、植物の名前について触れていますが、今月のコラムでは世にも珍しい名をもつ植物をご紹介します。
春に開花時期を迎えるものからご紹介していきます。まずは「あぶらちゃん」です。クスノキ科の落葉低木で3〜4月頃に黄緑色の花を咲かせます。ひらがなで書くととても可愛らしい感じがします。漢字では「油瀝青」となり、幹・種子・枝に油を多く含みます。何故「ちゃん」が付くのかというのは、「瀝青(レキセイ)」は中国語の発音で「チャン」と呼ばれることから「あぶらちゃん」という愛称のような可愛い名前が誕生したということです。お次は、「ウナギツカミ」です。春〜夏に花が咲く一年草で茎に鋭いトゲがあるため、ウナギがつかめそうというのが由来のようです。果たしてつかんだ人がいるのかは謎ですが愉快な名前です。この「ウナギツカミ」には仲間が多く、「アキノウナギツカミ」、「ナツノウナギツカミ」や「ホソバノウナギツカミ」などがあるようです。これだけあれば、ウナギもつかみ放題ですね。
そしてお次は、「チャルメルソウ」です。漢字では「哨吶草」と書きますが、絶対に読めない自信があります。花期は4〜5月で、名前の由来は裂開した果実が楽器のチャルメラに似ているから、のようです。他にも仲間で「オオチャルメルソウ」と「コチャルメルソウ」があります。なんだか、ラーメンが食べたくなりませんか?
お後は、「ナンジャモンジャ」です。和名は「ヒトツバタゴ」と言います。4〜6月に花が咲き、雪がかぶった様な美しい姿になります。「ナンジャモンジャ」という名前は「何というものか」の意味で、名前のはっきりしない見慣れない植物のことをいったもので、特定の植物をさす名前ではなく数種がこの名前で呼ばれていますが、ヒトツバタゴをこの名前で呼ぶことが最も多いようです。最初にご紹介した「あぶらちゃん」や「くすのき」、「かつら」などにも「ナンジャモンジャ」の名がつけられているようです。
そのほか、珍名をもつ植物は沢山あります。その一部をまとめてご紹介します。
◯ハキダメギク(掃溜菊)
掃き溜めで見つけられたから。
◯タイツリソウ(鯛釣草)
華鬘草(ケマンソウ)の別名。鯛の形に似ているから。
◯ハミガキグサ(歯磨草)
木賊(トクサ)の別名。硬い茎で歯も磨いたから。
◯メグスリノキ(目薬の木)
樹皮に目に良い成分があり、煎じて眼の洗浄薬にしたことから。
◯ブタノマンジュウ(豚の饅頭)
シクラメンの別名。シクラメンの原産地であるトルコやイスラエルで野生の豚がシクラメンの球根を食べたことから。他にも、花の形が篝火に似ているため、篝火花という呼び名もあります。
◯オニノメツキ(鬼目突)
柊の別名。葉のトゲで鬼が目を突かれて退散したという伝説があり、邪気を払う木され庭に植える習慣があります。また、ネズミが通り抜けるようなところへ柊の枝葉を立てておくと、ネズミもトゲを恐れて通らなくなるという効き目もあったようです。
◯オニシバリ(鬼縛り)
樹皮が丈夫で、鬼でも縛れるということから。和紙の原料にもなっています。夏には落葉して葉がないことから夏坊主の別名もあるようです。なんだか少し気の毒になってしまうような名前やイメージにぴったりの名前、メジャーな植物の知られざる別名であったりと、色々と面白いネーミングに興味をもっていただけましたか?ご紹介したい珍名の植物はまだまだ沢山ありますが、今回はこのくらいに・・・・。珍名に限らず、植物の数だけ名前もあります。ご興味が湧いたあなた!他にも色々と調べてみてはいかがでしょうか?