2013.03.01

女の子の花 “モモ”

寒い冬も過ぎ、長い眠りから目を覚まし始める3月。段々と暖かい日も増え、植物たちも新芽を出し始めています。そして3月3日はモモの節句、雛祭りです。雛祭りといえばモモの花。ちょうどこれからが見頃ですね。前回のコラムでも少しご紹介しましたが、今回のコラムではそんなモモの花についてもう少し詳しくお話しましょう。

—春の花 “モモ”

モモ

科属名:バラ科モモ属
花期:3月下旬〜4月末頃
原産地:中国
花言葉:あなたのとりこ、天下無敵

春の季語にもなっているモモの花。淡い紅色のものが多いですが、白色から濃紅色まで様々な種類があります。花形は五弁、または多重弁で、多くの雄しべを持ちます。花柄はとても短く、枝に直接着生しているかのように見えるのが特徴です。

◯モモの種類◯

〈矢口〉

矢口

ピンクの花で八重咲き。

〈関白〉

関白

白い花の代表的な品種で、八重咲き。

〈源平桃〉

源平桃

紅白に咲き分けます。

〈菊桃〉

菊桃

濃いピンクの花で、花形が菊に似ています。

花の咲き始めは3月3日よりも少し遅く、雛祭りに雛人形の隣に添えられているものは温室内で育てられたものです。モモの花は古く縄文時代から栽培されていると言われており、花は枝に沿ってびっしりと咲きます。果実が赤いところから「燃実(モエミ)」と呼ばれ、そこから変化して「モモ」と呼ばれるようになりました。漢字の「兆」は妊娠の兆しを意味していて、モモが雛祭りや女性と関係があるのはここから来ていると言われています。

—理想郷 “桃源郷”

桃源郷

桃源郷は俗世を離れた他界の事で、武陵桃源とも言われています。桃源郷の由来は、昔湖南省の武陵というところに漁師の男がいて、ある日谷川に沿って山奥へ船を漕いで遡った時、どこまで来たかわからない程の上流で、突如一面モモの花が咲き乱れる林が両岸に広がりました。その花びらや花粉の舞い散る美しさに心を魅かれた男は、その源を探ろうとさらにモモの花の中を遡り、ついに水源に行き当たりました。水源は山になっていて、山腹のトンネルを抜けると、見た事もない村に辿り着きました。男は村人に大歓迎してもらい、数日留まりました。それから男が家まで帰り、郡の長官にその事を告げると案内するように言われましたが、目印を辿ってその場所へ行っても、水源もモモの林も見つける事は出来なかったそうです。

古くから中国ではモモは単なる果物ではなく、桃源郷の不老不死の「仙果」と考えられていました。西遊記の中でも登場し、仕事もなくぶらぶらしていた孫悟空は玉帝から桃園の管理を任されました。ここのモモは食べると仙人になれ、不老不死になれると言われていました。そこで孫悟空はこの桃園のモモをほとんど食べ尽くしてしまいます。起こった玉帝は孫悟空に死刑を命じますが不老不死になってしまった為死ぬ事が出来ません。そこで玉帝はお釈迦様に頼み、孫悟空を五行山に投獄した、という話は今でも有名ですね。

いかがでしたか?春の花といえばサクラが真っ先に浮かんできますが、美しさで言えばモモの花も負けていません。開花の時期も長めなので、春先長く楽しめますね。モモの花と言えば、山梨の甲府の辺りに桃源郷公園という、名前の通りモモの花の名所があって、そこでは満開のモモの花が見れるそうです。この春ぜひ足を運んでみては?