2014.07.01

初夏のイルミネーション

まだ雨の音の似合う7月。けれど少しずつ気温も上がり、夏の匂いがするようになってきました。そんな中、川辺などではこの時期の風物詩とも言える、ある生き物のイルミネーションが見られます。昔からその光で私たちを楽しませてくれている、そんな“ホタル”について今回は書いていきましょう。

―実は数万年前から?

ホタル

ホタルは甲虫類に属する昆虫の仲間です。現在日本には30種類以上、世界では2000種以上いると言われています。実はホタルの歴史は長く、私たち人類が数万年前から生息しているのに対し、ホタル類は数千万年前から地上に棲んでいたと考えられています。
“ホタル(蛍)”という言葉は多くの古事の中にも見られますが、ホタルを“ホタル(蛍)”と呼ぶようになったきっかけは、貝原益軒の著書にある「大和本草ではほは火なり、たるは垂なり。」と言っていう火垂説があります。ホタルのお尻に火が垂れているので火垂れ虫→ヒタレ→ホタレ→ホタルというわけです。また貝原益軒がこのように述べた100年後、小野欄山による本草紀聞や本草網目啓蒙の中では、「一説に星垂の意なり。」という記述もあります。つまり、昔の人たちはホタルを火であったり星に例えていたようです。なるほど、確かにどちらも分かるような気がしませんか?

—ホタルの生態

ホタルの生態

ホタルは主に熱帯から温帯の多雨地域に分布し、幼虫時代を水中で過ごす水生ホタルと、陸上の湿地で過ごす陸生ホタルがいます。日本で多く見られるホタルは“ゲンジボタル”“ヘイケボタル”の2種類が代表的な種類となり、この2種はどちらも水生ホタルです。水生ホタルについて話していきますと、ホタルは湿った水苔などに産卵し、卵は約30日程度で孵化します。ホタルはこの幼虫期が一番長く、約10ヶ月程水中でカワニナ(巻貝の一種。ゲンジボタルの幼虫の主食。ヘイケボタルはタニシやモノアラガイが主食となります。)を餌とし、順調に成長した幼虫は次の年の春に岸に上がります。この時、既に幼虫の時点で発光します。陸に上がった幼虫は土に潜り、土繭を作って約30日程で蛹になります。蛹の状態で2週間程過ごした後は羽化し、成虫は光りながら川岸を飛び、10日程でその一生を終えます。成虫になると、ホタルは水は飲みますが何も食べず、幼虫時代に蓄えた栄養で過ごします。
ちなみに、このホタルの一番の特徴の発光ですが、なぜ光っているのか分かりますか?ホタルは発光させる事により、仲間に自分の居場所を教えるなどのコミュニケーションを取っているのです。また、夜光りながら飛んでいるのはほとんどがオスで、メスは草や木の葉にじっと止まって小さな光を出しています。光り方にはプロポーズの為の光、刺激された為の光、敵を驚かす為の光の3種類あるとも言われています。光でメスにアピールするプロポーズなんて、なんだかロマンチックですね。
※全ての種類のホタルが光るわけではありません。

—文化的な虫、数の減少

日本人はホタルが好きで、よく文献にも登場しています。古くは奈良時代に書かれた日本書記にも登場し、その他多くの物語や詩歌の題材に用いられてきました。江戸時代においてもホタルの見物に多くの人が集まり、楽しまれていたそうです。以前ホタルは日常生活の中に存在する身近昆虫で、ホタルを背景とした一連の景色が記憶に残り、文献等に用いられる事によって文化も育まれるというような、どこか文化的な昆虫でありました。
しかし、環境改変や水質汚染などにより、近年ホタルの数は減少し、この50年で10分の1程までに生息地が減少していると言われています。現在ホタルの保護運動や、ホタルの生態系維持の活動を行っている団体も少しずつ増え、ホタルに良い環境作りも注目されています。

—ホタルの名前が付いた植物

植物でもホタルの名前が付いたものがあります。1度は名前を聞いた事があるかもしれませんが、“ホタルブクロ”です。開けたやや乾燥した草原や道端などによく見られる植物で、山間部では人里にも出現する野生植物ですが、その姿の美しさから山野草として栽培される事も多いです。花の色は赤紫と白があり、関東では赤紫、関西では白が多く咲いています。開花時期 は6/1〜6/25頃で、まさに袋の形をしています。(英名ではbellflowerと言います。)名前の由来は“花の中にホタルを閉じ込めると、その明かりが外へ透けて見える”所から来ていると言われています。また、提灯の古名を“火垂(ほたる)”といい、その提灯に似ている事から“ほたる”、そこから“蛍”になったとも言われています。

ホタルブクロ◀ホタルブクロ

いかがでしたか?今回は水辺のイルミネーション、ホタルについてご紹介しました。なかなかホタルを見られる場所は少なくなってきていますが、マナーを守って夏のイルミネーションを楽しんでみてはいかがでしょうか?