- 2017.03.01
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徒花の”花”って…?
徒花(あだばな)とは?と訊かれて、その意味を答えられるだろうか。
“咲いても実を結ばずに散る花。転じて、実(じつ)を伴わないこと。一見、見映えが良くても、結局中身が無いので役に立たないこと。”
まぁ、大体このような意味になろうか。細かくは答えられなくとも、なんとなくこんな感じでしょ?みたいなことは誰しもが言ったり思ったりはできる(と思う)。言うまでもなく、あまり良い喩えとしては使わない。「徒花で構わない。一花咲かせてみせる。」なんて、前向きなんだか投げやりなんだか判らない言い回しをする人もいるようだけれど。
…では、徒花の”花”って何の花?と訊かれれば、これはちと答えに窮する。自身の無知を感じつつ調べてみると……。なぁんだ。ちゃんと辞書に載ってるじゃない。あっさり解決。
〖徒花〗―あだばな
・咲いても実を結ばずに散る花。転じて、実(じつ)を伴わない物事。無駄花。「徒花を咲かす」「徒花に終わる」
・季節はずれに咲く花。
・咲いてすぐ散る、はかない花。特に、桜の花。
なるほど、桜の花のことだったか。そういえば徒桜って言うな…。
〖徒桜〗―あだざくら
・散りやすい桜。
・儚いものの喩え。
・移り気な女性。…三つ目の意味はともかく、現在を謳歌していも、後の時代に徒花といわれる物事はきっとある。良かったと思うものもあれば、そうでなかったと思うものもきっとある。でも、それをどこか懐かしく愛しく思うことも、これまたきっとある。悲喜こもごも。嬉しく楽しい時もある。悲しくて辛くて、やりきれない時もある。完璧なものだけでなく、むしろ徒花・徒桜があちらこちらに咲いているからこそ、この人世は成り立っている。そういうものなのかもしれない。
‟時代の徒花“とは、よく聞く言い回し。咲いたものの、時代の流れに乗っていくこともできず、はかなく散っていった花のこと。華々しく世に出てきたものの、そぐわず、たいした活躍もなく消え去る、あるいは忘れ去らる物事。どこか儚く、切なく、否定しきれない微妙な感情が滲む言い回し。
まもなく桜の便りが届くころ。皆、桜の魔法を心待ちにしている。
心弾ませるのは桜の花。
世の儚さを喩えるのも桜の花。桜の散り際に人の生き様をなぞらえて、多くの命を散らしたことは許しがたいけれど、良くも悪くも、つくづく日本は桜の国なんだなぁ。