2010.12.01

「ヤドリギの下でキスをしよう。」

 12月に入り、街はきらびやかなイルミネーションに彩られ、Xmasムードが高まってきました。イルミと共にXmasディスプレイには植物も欠かせません。Xmasにまつわる植物はモミやポインセチアなどが有名ですが、日本でこそなじみ薄いものの、欧米ではヤドリギ(英名:mistletoe)もXmasと深い関わりがあるのをご存知でしょうか。

ヤドリギの果実
粘着質の果肉を持つヤドリギの実

 ヤドリギとは、ビャクダン目に属するビャクダン科・オオバヤドリギ科・ミソデンドロン科の寄生植物の総称で、その名の通り他の木に寄生するまり状の姿が特徴的な植物です。ブナ・ミズナラなどの落葉高木に寄生しミネラルの供給は宿主に依存しますが、ヤドリギ自身は常緑の葉を持ち自ら光合成も行う“半寄生植物”です。特に繁茂が激しい場合には宿主を枯らしてしまうこともありますが、通常は成長を阻害する程度の寄生に留まります。粘着質の果肉を持った淡黄色の果実に特徴があり、鳥に食され糞として排出された際に枝などに引っ付くことで他の樹木に宿り生活することができます。実が橙色のアカミヤドリギ、白色のセイヨウヤドリギ等がよく知られています。

 欧米には、Xmasシーズンにカップルがヤドリギの下でキスをすると永遠に結ばれるといった風習があり、
  『Let’s kiss under the mistletoe.』
   (ヤドリギの下でキスしよう)
は口説き文句にもなっているとか。中には、男性はXmasの日にヤドリギの下にいる女性にはキスしてもいいとか、そのキスを断った女性は翌年結婚のチャンスがないとか、男性にはとても都合のいい言い伝えもあるようです。
 これらの習慣は、大地に根を張らず落葉した樹上で冬でも緑を保つヤドリギを、欧米の人々が「再生」「永遠の命」のシンボルとし、神聖で不思議な力を持つものとして尊重したことから来たとされます。ヨーロッパの先住民族ケルト人が信仰していたドルイド教は、ヤドリギを聖なる植物としてあがめ、冬の到来を祝うのに使いました。
スカンジナビア地方に伝わる神話(そこにキリスト教も融合しているとの説もありますが)には、ヤドリギの矢によって死んだ太陽の神バルドルが復活したのを喜んだ母・愛と美の女神フリッグの喜びの涙がヤドリギの実となり、喜びのあまりヤドリギの下を通るすべてのものにキスをしたため、「ヤドリギの下を通るものは争いをしてはならない、愛に満ちた口づけを交わすのみ」という掟を定めた、というものがあります。
 欧米では、Xmasにヤドリギを球状に編み込んだKissing Ballを飾るという習慣も今なお残っています。、

ヤドリギ
白樺に宿ったヤドリギ

 普段は目立たないヤドリギですが、落葉するこの季節、丸裸の木に丸々と茂るヤドリギを見つけやすい季節です。都心でも見つけられますよ。気になるあの人を誘って、ヤドリギの下で幸せをつかみましょう。