2011.01.01

「千両、万両以外に百両もある?」

 お正月に飾るめでたい植物は多々ありますが、マンリョウ(万両)センリョウ(千両)も正月を祝うにふさわしい定番の植物です。
( 以前のコラム「門松」「松竹梅」を参照)

センリョウ
千両の実は葉の上につく。

 字からしてありがたい雰囲気漂う植物ですが、実はこの2種、同じ仲間ではありません。
マンリョウ:ヤブコウジ科の常緑小低木。11月~3月頃まで、葉の下側に赤い実をつける。
センリョウ:センリョウ科の常緑小低木。マンリョウと比べ果期は短く、12月~1月頃葉の上側に赤い実をつける。
マンリョウ・センリョウ共に、赤実だけでなく黄実や白実の品種が存在します。

 「万両」や「千両」があるなら、「百両」はないのでしょうか?

カラタチバナ“百両”
百両にも赤実と白実の品種がある。

 実は、「百両」という植物もありますし、それどころか「十両」「一両」という植物もあるんですよ。
 百両→ヤブコウジ科の常緑小低木で、別名カラタチバナで流通することも多いです。中国名の「百両金」から名付けられたとされています。
 十両→ヤブコウジ科の常緑小低木で、別名ヤブコウジで流通することが多いです。
 一両→アカネ科の常緑小低木で、別名のアリドオシの方がよく知られています。茎に付いているトゲがアリを貫くように鋭いの意味から「蟻通し」と名付けられました。

 これらのおめでたい和名の由来には諸説あります。
・マンリョウが「百両金」という中国名を持つカラタチバナに似ていることから、それに対応する名前として「万両」とつけられた。
・センリョウには元々「仙寥」の字があてられていたが、マンリョウと同じように赤い実をつけることから「千両」の字があてられるようになった。
・センリョウに似ているが、より多くより美しい実をつけることから「万両」とつけられた。
 どの種に最初に「~両」の名が付けられたのかは定かではありませんが、上記5種とも、秋から冬にかけて鮮やかな赤い実をつける点で共通しており、木の大きさや実をつける数などからそれぞれの数字があてられたことは間違いなさそうです。

マンリョウ
赤実と白実の品種がある万両。実は垂れ下がる。

 正月の寄せ植えで特によく使われるセンリョウ・マンリョウの区別だけでも覚えておくと良いでしょう。
実の付く位置で簡単に区別できますが、どっちがどっちだったか混同してしまいがちです。
 万両の方が大金なので重い
 →実も下に垂れ下がる
 →実が下にあるのがマンリョウ

と覚えておけば、少しは忘れにくくなりますでしょうか。

 これらの植物はそのめでたい名前から、特別な意味を持たせたより縁起の良い特定の組み合わせも存在します。
 センリョウ・マンリョウ・アリドオシを寄せ植え
 →「千両・万両有り通し(有りっぱなし、の意)」
 センリョウ・マンリョウ・モッコク(ツバキ科の常緑高木)を寄せ植え
 →「千両・万両を持ち込む
 名前だけでなくその飾り方にまで意味を持たせているのを知ると、
昔の人々のあふれる遊び心を感じ取ることができ、鑑賞もより一層楽しくなりますね。