2017.07.01

オフィーリアの花

オフィーリアとは、ハムレットに登場する少女の名です。
オフィーリアは、ハムレットに典拠を得て表現されるものとして多くの媒体が存在します。

その中で、今回は絵画に重点をおきたいと思います。


様々な絵画のオフィーリア。穏やかな顔をしたもの、美しい少女像を前面に出したもの、絶望を受け入れているもの、そして狂気のさなか…。描かれた時代によって受け入れられるテーマが変わってくるのも見ものです。


製作過程
最も有名なミレーのオフィーリア(ラファエル前派)は、製作過程が大変だったこともよく知られています。水に沈んだ少女のモデルは、やはり生きているのですから、長く水に浸かるなど出来ません。現在の絵画モデルと違って「~分後、~分休憩です!」などという決まりは無かったようですね。
ミレーのオフィーリアは、風が吹きすさぶ川辺で背景を、自宅の浴槽の側で少女を、別々に描かれました。絵画を屋外で描くことは弊害も多く、快適な環境とは言えませんので、写真が普及していなかった時代の製作はさぞ骨の折れることだったでしょう。


絵画の隠喩
ミレーのオフィーリアは、感傷・狂気・水死の象徴として描かれています。美しい少女、それだけで何にも代えがたい記号として存在し、目が吸い寄せられます。少女の周囲には花がただよい、それぞれに意味が込められています。ヤナギは見捨てられた愛、イラクサは苦悩、ヒナギクは無垢、パンジーは愛の虚しさ、首飾りのスミレは誠実・純潔・夭折、ケシの花は死を意味します。若い人間ほど狭い世界で思いつめますから、オフィーリアがどんな想いで死に向かっていったのか…。花は絵画の中でポピュラーな隠喩ですので、花言葉を覚えると、絵画を読み解く時に理解が深まります。
絵画を楽しむ方法のひとつとして、隠喩を探し紐解いていくと、自分だけの見解にたどり着くこともできます。


花言葉は贈り物のためだけに存在すると思っていませんか。
そして、ミレーのオフィーリアはロンドンで鑑賞することができます。

水面の花