2010.01.26

「鬼も怖がる木」

「鬼は~外!」「福は~内!」
今年の2月3日は節分です。今回は節分にまつわる植物のお話ということで、少し早めにアップします。

 皆さんもご存知のように、節分の夜には豆まきをします。今ではあまり見かけなくなったようですが、節分の頃行われる風習に「柊鰯(ひいらぎいわし)」というものもある事をご存知ですか?

鬼も怖がる柊鰯 柊鰯とは、ヒイラギの小枝に焼いたイワシの頭をさしたものを家の入口に飾る風習で、古くは土佐日記(紀貫之が著した書物で935年頃成立とされる)に既にその記述が見られ、「柊挿す」は冬の季語にもなっています。明治時代には柊鰯に関係したおもしろい錦絵も残されています。鬼たちが自分たちの弱点に関する講義を受けている様子を描いた河鍋暁斎の作品『化々学校』では、その中にヒイラギとイワシも描かれており、柊鰯が一般に広く普及していたことを伺わせます。
 ヒイラギにさすものが元々はイワシでなくボラの子の頭であったり、関東では大豆の小枝も添えられたり、またイワシを添える理由が、鬼がそのニオイを嫌うからだとか、逆におびき寄せるためだとか、文献により若干の相違点は見られますが、ヒイラギの枝を添える点とその理由は共通しています。

ヒイラギ園芸品種「ゴシキヒイラギ」 なぜ、ヒイラギなのでしょうか?
 ヒイラギの葉には棘があり、触ると皮膚がひりひりと痛みます。古語でひりひり・ずきずき痛むことを「ひひらぐ(ひいらぐ)」と言い、ヒイラギの名の由来とされているほどです。その鋭い棘で、家に近寄る鬼の目を突き撃退する効果があると考えられていたため、邪気除けとして用いられたというのがその理由です。同じ理由で、家の生垣や庭木としても用いられてきました。

チャイニーズホーリーを使ったクリスマスディスプレイ ヒイラギといえばクリスマスが思い浮かぶと思いますが、節分のヒイラギとクリスマスのヒイラギは、実は同じ種ではありません。
 節分のヒイラギはモクセイ科・果実は暗紫色・葉は対生します。クリスマスのヒイラギはモチノキ科・果実は赤色・葉は互生し、正しい種名はセイヨウヒイラギ(クリスマスホーリー)です。
棘を持った葉の形が良く似ているため「ヒイラギ」の名が入っていますが、全くの別種なのです。他にもモチノキ科のシナヒイラギ(チャイニーズホーリー)やメギ科のヒイラギナンテンなどが、ヒイラギとは別種ながら似た葉を持つ木として知られています。

ヒイラギの成木の葉と果実 ちなみにその特徴的な葉の棘ですが、ヒイラギもセイヨウヒイラギも、実は老木になると次第に棘が取れ、丸い葉になってしまいます。
 若い頃トゲがあった人も年を取ると性格が丸くなる、とよく言いますが、植物も同じなんですね。